東室ウィークリー
【東室ウィークリー Vol.96】
更新日:2019.06.14
【東室ウィークリーVol.96】
事務局のある関東では、先週末から梅雨入りとなりました。
少し肌寒い日があったり、気圧の変化が激しくと体調を崩しやすい時期ですので、皆さまもどうぞご自愛ください。
さて、今回のvol.96のテーマはズバリ『思い出の映画作品』です。
6/16(日)に茨城県の坂東市民音楽ホールで開催の「ファンタジーオブシネマ ~スクリーンを飾った名曲たち~」を控え、演奏家の方々にも思い入れのある映画作品があるのではないか…?聞いてみたい!という思いのもと、
首席チェロ奏者の「小澤洋介」さんにお伺いしました!
それではどうぞご覧下さい。
映画と音楽、それは切っても切れない素晴らしい関係。
思い出の映画は音楽と共にみんなの記憶に刻まれています。そしてその音楽を聴くとまた、その記憶が解き放たれるのです。
今回の坂東市民音楽ホールで演奏される「ファンタジー オブ シネマ」のプログラムは、セレクトされた名作ぞろいですが、私にとって特に印象深い映画は「ニューシネマパラダイス」です。
ちょうどこの映画ができた1988年ごろ、私は度々この映画の舞台であるシチリア島を訪れました。モーツァルト生誕の地・ザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学を卒業した私は、「ザルツブルク室内オーケストラ」の一員として演奏していました。この小さなオーケストラは、本場のモーツァルトが売りで、ヨーロッパの多くの町々での演奏旅行がありました。
何度も訪れたのがイタリアの最南端の地、このシチリア島。
海岸線の美しいメッシーナ、空港のある州都パレルモ、そして特に印象的だったのは島中部のエンナです。
ひたすらに山道をくねくねと登りつめた先に突然現れる城壁と古い街並み、そして夕闇迫る町の広場では、こんな辺鄙なところでも、他のイタリア中の広場同様、若者達がミニバイクに彼女を乗せ、老人達はカードゲームに興じていました。
映画「ニューシネマパラダイス」は、そんなシチリアの田舎町が舞台です。夏の夜のあの乾いた埃っぽい暑い夜、そして冬の湿気たひんやりとした空気、オリーブや柑橘の香りとともに思い浮かんできます。
また主人公の子供時代に目覚める映画への想い。私も少年時代に出会った音楽が、一生の仕事になってしまった事と重ね合わせてしまいます。
初恋、失恋、危機、実現など人生において普通の出来事ですが、一人一人にとってかけがえのない記憶。それこそがこの映画のテーマです。
この素晴らしい作品の音楽を担当したのはエンニオ・モリコーネ。
本当に清々しいサウンドで映像を超えるほどの、しんみりと心に染み渡る音楽で表現しています。
今回の「ファンタジー オブ シネマ」では巨匠モリコーネの名曲「ミッション」より“ガブリエーレのオーボエ”、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」より“デボラのテーマ”、そしてこの「ニューシネマパラダイス」と三曲の名曲をお楽しみいただけます。
お聴き逃しのないよう、皆様ぜひご来場下さい。
小澤さんありがとうございました!
映画の内容と自身の体験がリンクし、その人にとって思い出の一作となることはしばしばありますが、それが映画の公開時期とほぼ同じ時期にその舞台に居たということはかなり珍しい、小澤さんならではの内容だったのではないでしょうか。
小澤さんもオススメの巨匠モリコーネ作曲の三曲を含め、多数の名曲が楽しめる「ファンタジーオブシネマ」どうぞお楽しみに!
来週の東室ウィークリー担当はコントラバス奏者の駒井 朗(こまい あきら)さんです。
演奏家同士でもあまり知られていないコントラバスの移動、運搬事情について、お話しいただきます。
こちらもぜひお楽しみに!