東室ウィークリー
【東室ウィークリー Vol.75】
更新日:2018.12.21
【東室ウィークリー vol.75】
今月半ばに入ってから、急に寒くなりすっかり冬真っ只中!という感じになってまいりましたね。
ウィークリー担当は手袋・帽子・マフラーのフル装備で毎朝寒さに立ち向かっています。
さて、今月3回目となりました東室の演奏家に聞く「楽器のメンテナンス&アクセサリー」、
今回のVol.75は首席オーボエ奏者の林憲秀(はやし のりひで)さんです!
オーボエ奏者ならではの苦労やちょっと変わったグッズをご紹介いただきました!
それではどうぞお楽しみください!
東室ウィークリーをご覧の皆様、こんにちは。
オーボエ奏者の林 憲秀です。
年の瀬はなにかと慌ただしいですが、そこで大掃除にちなんで、ということで楽器のお掃除について皆さんにご紹介させていただきたいと思います。
オーボエ奏者に限らず、管楽器は楽器に息を吹き込んで演奏するので、管内に水が溜まります。
汚い話とお思いかと存じますが、溜まっている水分中には、もちろん唾液も含まれているとはいえ、そのほとんどは外気より暖かい空気が管内に送り込まれたことによって発生する結露、要するに水蒸気なんです。
この水を放っておくとやっかいなのは、トーンホールという音孔に水がたまると、最悪、音が出ないことも。
特に上部管はトーンホールが小さいので気をつかいます。
なので、オーボエ奏者は水抜きの為に頻繁に管内の掃除をします。
その時使うのが、写真にある水鳥の羽根です。
スワブ(管の中に通す、紐のついた布)も使うのですが、
私の場合、演奏中は「羽根」なんです。
その訳は、オーボエの上部管、特にリードを差し込むソケットの部分は大変細く仕上がっていて、スワブを詰まらせやすいのです。
私はその昔、オーケストラピットでバレエ音楽を演奏途中、スワブで管内の掃除をして詰まらせてしまったことがあり、それ以来演奏中の掃除は羽根を使っています。
さすがに、羽根を通しただけでは、管内の水気を取りきることは出来ませんので、楽器をケースにしまう際には布製のスワブでしっかり水気を拭き取ります。
他の管楽器で羽根を使っている楽器はないのですかね。
どうもオーボエ奏者だけです、羽根を持ち歩いているのは。
水鳥の他にもきじの羽根を使う方もいらっしゃると思います。
あまりお見せする姿ではないのですが、本番中でも私はせっせと羽根で管内の掃除をしています。
有名な「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲を演奏する時などは、途中に出てくるソロを「上手く入れるか」よりも「水が溜まってないか」の方が気になっています。
それから、東室のコンサートで許される時、私は開演前にステージ上で音出しをさせていただいています。
なぜかと申しますと、出来るだけステージ上の温度に楽器をならしておきたいのです。
概ねしてステージ上よりも舞台裏の方が気温は低いです。舞台袖で待っている間に楽器も冷えてきて、そのままステージに上がって楽器を吹きますと、驚くことにチューニングの音を出しただけで水が溜まることもあるのです。
私が留学していたアメリカでは、開演前から楽員が各自のタイミングでステージに上がり、開演前ベルが鳴るとコンサートマスターが入場してチューニング、というのが基本で、その後勤めたメキシコのオーケストラでも同様でした。
なんだか、オーボエ奏者は言い訳ばかりな感じで心苦しいのですが、まだまだネタに尽きないので、今後もお付き合いいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
林さんありがとうございました!!
とてもデリケートな楽器のために、様々な工夫を凝らしていることがよくわかり、とても興味深い内容でした。
確かに木管奏者がステージ上でスワブを通している光景はたまに見ることができますが、羽には気づいたことがありませんでした。(今度よく見てみます!)
皆さんもコンサートなどでオーボエに注目してみると羽を通している光景が見られるかもしれませんね。
さて、次回の東室ウィークリーですが、2018年最後の更新ということで、
事務局スタッフの視点から一年間を振り返った内容を予定しています。
今年も規模であったり、ジャンルであったり、本当に多種多様なコンサートに多数出演いたしました。
そんな東室の2018年がまるっとわかる次回の更新、ぜひお楽しみに!