東室ウィークリー
【東室ウィークリー Vol.85】
更新日:2019.03.01
【東室ウィークリー Vol.85】
いよいよ3月になりました。皆様も年度末となるとさぞかし忙しいと思いますが、当団も3日のみなとみらいホールでの公演、また29日にあります90周年公演に向けて日々動き続けております。
今月の東室ウィークリーのテーマは引き続き、「90周年コンサートに寄せて」です!
3月最初の演奏家は東室自慢のヴァイオリンセクションの柱の一人であります、アシスタントコンサートマスターの工藤由紀子さんです!!
アシスタントコンサートマスターとして長年東室のヴァイオリンセクションを支えてきた工藤さん、いわくぼ氏の近くで過ごしてきたその貴重な経験をお話して頂きましたので、どうぞご覧ください!!
こんにちは、ヴァイオリンの工藤由紀子です。
東京室内管弦楽団に参加させて頂いてから30年近くになるでしょうか・・90周年という事を考えるとたったの3分の1ですが。
その3/29「創立90周年コンサート」で弾くのを私はとても楽しみにしています。
というのも、長年当団の音楽監督兼指揮者でいらした故・いわくぼささを先生の編曲した曲をたくさん演奏する予定だからです。
私が初めて東室に参加した時、あらかじめ知らされていた曲以外に手書きのアレンジ譜がどっさり譜面台に乗っていて驚きました。
皆さんは何十回と弾いていらっしゃるので「あーこれねー」という感じでしたが、
初めての者には簡単ではなく、休み時間に席で練習していた所、後ろに気配を感じて振り向くといわくぼ先生が!(汗)
「ご苦労様。でもそこはしばらく1オクターブ上ですからよろしくね~」と立ち去って行かれました。
あっ!!! 小さく「8Va…」とあるのを見落としていました、シマッタ!練習のし直しです。
1オクターブ下で練習している新人に「早く気がつかんかな」と思っていらしたでしょうね・・・
そんな新米にとってもいわくぼ先生編曲の映画音楽やタンゴは、オーケストラの中で弾いていて「なんてオケが豊かな音色でよく鳴るんだろう!」と驚きでした。
それから年月は流れ、私もほとんどの曲を「あーこれね~」と言えるようになりましたが、それでもまだたまに「これ初めて!」という曲が登場する位数多く編曲なさっています。
その中で私が好きな曲を少しご紹介させてください。
映画音楽では
「風と共に去りぬ」「慕情」「エデンの東」が大好きです。
曲の最初に序奏、つまりテーマのメロディが出て来る前に導入部分があり、そこは少し難しかったり合わせるのに気を使う事が多いのですが、
そこを無事通過してメロディを弾く時の解放感!独特の「いわくぼサウンド」がさく裂します。
たとえば山登りで林の中を歩いていたのが、急に視界が開け遠くの街や海が見えた時の「おお!」という感じ・・でしょうか。
この演奏している側で感じる素晴らしい解放感は きっと聴いている方々にも伝わっている事と思います。。
そして曲が進むとある所で突然オーケストラが鳴り止み、管楽器の美しいソロが響く・・ある時はフルートだったりトロンボーンだったり。
そのタイミング、楽器の使い方も絶妙です。
タンゴ風にアレンジされた「チゴイネルワイゼン」
これは通常のように独奏ヴァイオリンと伴奏ではなく、オーケストラ全員でタンゴ風にジプシーの歌を奏でます。
ソロで弾く難しい部分もヴァイオリン全員で弾いたりするので迫力満点です。
そしてお客様をケムに巻くように唐突に曲は終わります。
タンゴ「ジェラシー」の冒頭もヴァイオリンの魅力を最大限に発揮するよう書かれていて、途中からは低弦楽器のうなるような迫力に圧倒されます。
他にも書ききれない程素敵なアレンジがたくさんあり、どの曲も東室が長年本番を重ねてきて仕上げて来た東室ならではのサウンドになっています。
ぜひ多くの方々に聴いて頂ければと思います。
余談ですが、ずっといわくぼ先生にお伝えできなかった事を一つ・・
移動の時何人かで先生の車に乗せて頂き、ヴァイオリン弾きは首を痛める事が多く(あの不自然な姿勢ですから)なかなか合った枕がない、柔らかすぎて・・・という話になりました。
いわくぼ先生 「『とう』の枕は良いですよ」
私 「少し硬すぎませんか?」 「まあ、普通よりは硬いけど・・気持ち良いですよ」
「冬は冷たくないですか?」 「そうでもないですよ、カバーするし」
「洗えそうでいいですね」 「う~ん、洗った事はないけどねえ・・」
目的地に着き、話はそこで終わりました。
数か月後、田舎の義父が気持ちよさそうに昼寝している頭の下にあるのは・・・『籐の枕』!!!
あ~!!!『籐』でしたか・・!!!
わたしはナント『陶』の枕だと思っていたのです。そんなモノあるか‼ですよね。
冷たいだの洗えるだの・・マヌケもいいとこです。
でもシャイな私は、いわば「社長」のような方に気安く話しかけられるタイプではなかったので、「あの時は・・」などと言い出せないまま。
そして他界されてしまいました・・・
この文を読んでくださっているでしょうか、笑ってやってください。
(後で聞いたらそこに居合わせたメンバーは皆もちろん「籐の枕」と思ったそうで大笑いされました)
それぞれのメンバーがいろいろな想いを持って演奏する記念コンサート、
聴いて頂く方々にも充分にその魅力をお届けできるよう準備を重ね、素晴らしいコンサートにしたいと思います。
お読み頂きありがとうございました。
工藤由紀子
工藤さんありがとうございました!
現在も東室のヴァイオリン及び弦楽器セクションは非常に高い評価を各所から頂いておりますがその理由がわかる内容だったように思います。
また、工藤さんの少しお茶目な一面も知ることができ、スタッフ一同楽しく
読ませていただきました。
そして、昔の懐かしいコンサートのチラシの写真もいただきました!
工藤さん曰く、大編成の白黒写真はおそらく、江藤俊哉・アンジェラ夫妻をお招きした際の「100ストリングス」の写真、とのことです。
時代を感じさせる貴重な逸品ですね…!
次回の東室ウィークリーは2ndヴァイオリン首席奏者の佐藤明美さんです!
たった今、工藤さんからのお写真で触れましたが、現在ではあまり耳にすることがないコンサート「100ストリングス」の事などを語って頂きましたので来週もどうぞご期待ください!