東室ウィークリー
【東室ウィークリー Vol.81】
更新日:2019.02.01
【東室ウィークリーVol.81】
つい最近お正月だった気がするのですが、早いものでもう2月です。
2月は日数が少ないこともあり毎年一瞬で過ぎ去ってしまうので、一日一日を大切に過ごしていきたいですね。
さて、今度の東室ウィークリーのテーマは2月3月と続けて、「東室90周年コンサートに向けて」として東室をよく知るメンバーに東室の昔話やこれからについて、
そして3/29の90週年コンサートについてなどをお話しいただきます!
vol.81の今回は当団トランペット奏者およびエデュケーション・プログラム・アドヴァイザー、作編曲も手がけていらっしゃる「三澤 慶(みさわ けい)」さんにお伺いしました。
東室の音楽やご自身の作編曲について、90週年コンサートの聞き所などたくさんお話しいただきましたのでどうぞご覧ください!
突然ですが、みなさんはオーケストラのコンサートには何を目当てに行きますか?
国内のオーケストラの場合、ズバリ「プログラム」という方もいらっしゃるでしょうし、シェフ(指揮者)で選ぶという場合も。
また、海外のオケの場合はプログラムより、むしろ「そのオケ」を聴きたい!という方も多いのではないでしょうか?
いずれにしても、各オケともお客さまに魅力を感じてもらえるようなプログラム・演出を日々「何かないか?」と悶々と企画を練っているのです。
その中で、他所のオケとの「差別化」を考えると、我が東京室内管弦楽団(以下、東室)は、オリジナルのアレンジによる譜面を持っている、という大きな大きな「強み」があります。
正直、同じ譜面さえあればどこのオケだって、多少の差はあれ、そこまでの「差」って生むの大変なんです。
もちろん、シェフの音楽解釈、各プレイヤーの資質の違い、などあるでしょう。
しかし、こればかりは変に奇をてらって変わった事をやったからって感動を生むものではありません。
「再現芸術」として譜面の指示を100%正攻法で再現した上で、ある種の霊力のようなものを発揮出来た時に初めて生まれる「差別化」です。
それは正直いつもいつもできる、というものではありません。
でも、東室にはオリジナルアレンジによる譜面があります。
「誰でもわかる」違いを感じていただけるはずなんです。
これは一目瞭然。他所のオケでは絶対に聴くことはできません。
もし他所でも聞けるとしたら…
①事務局の中にスパイがいて、データをリークしている。
②実は三澤がスパイで、データをリークしている。
のどちらかです。
あ。
東室には前音楽監督の岩窪ささを氏の残した膨大な「遺産的譜面」があります。
もちろん、時代的に手書きのものですので、「紙」の状態です。
これは使っていると当然品質は劣化します。
今ではよく使うものはまるで「古文書」のような状態で、本番中、舞台上でメクリの時に「ビリッ!ぅわっ!」とかあります。
なので、今オケのライブラリーセクションの方で、コンピュータ浄書・データ保存を少しずつ進めています。
ただ、私自身が「手書き時代」の最後の最後を知っている世代なため、「手書き譜」から伝わる、アレンジャーの気持ちやこだわりが感じられなくなっていってしまうのは少し残念。
私自身、実は東室のメンバーになったのは岩窪ささを先生が亡くなった後のことです。
先生がご存命の時代からのメンバーはアレンジに関して直接先生から指示を受けて来たわけですから、岩窪アレンジの譜面を演奏することに関しては思い入れは強いはず。
けれども、書き手はいつか必ずいつか死んじゃいます。これは仕方ない事ですね。
けれど譜面はちゃんと保存すれば絶対に死にませんね。
中には「スコア(総譜)がなくなってる」とか「音ミスがある」ものも、あれだけの数の譜面があれば、そりゃありますよ。
ただ、東室の「遺産的譜面」ですので、必要に応じて改定や修正をしながら残して、そして、お客さまにお届けして聞いて頂きたいと思っております。
アレンジのサウンドというのは、もちろんアレンジャーの嗜好・好みはもちろんですが、「時代のトレンド」というものがとても影響します。
私が初めて岩窪アレンジを演奏した時にそれを強くて感じました。
「時代の音」が色濃く残り、今聞くと「古臭い」という側面もあるかもしれません。
しかし、「古臭い」=「懐かしい」=「そうそう!やっぱ、これこれ!」という世代のお客さまも必ずいらっしゃいます。
そして、もう少し時代が進めば「逆に新しい」とか「トレンドがリバイバルした」という日が必ず来ます。(最近の若者の丸メガネやチェスターコート、股上の深いワイドパンツと同じです。)
そして、今東室では私のオリジナルアレンジの演奏して頂く機会が増えています。もちろんコンピュータで書きます。パート譜もRG(老眼)の人が多いので、極力大きめに。
先日、やめればいいのに、コンピュータの「東室フォルダ」の中の譜面を数えてしまいました。
軽く200を超えていました。
譜面はゲストに来たシンガーの伴奏アレンジが多いので、日常的に使う譜面ではありません。
けれど、ゲストアーティストとの打ち合わせに行った東室のマネージャーは
「うちには内部に超有能なアレンジャーがいるんで、どんな曲でもすぐアレンジできます!」とか勝手な事を言って話をまとめてくるとか、こないとか。
また、アーティストさんの方からも「この歌をオケで歌えるなんて夢のよう」なんて言うお言葉を頂くことも多く、
またそんな風に歌手の方のテンションが上がった時はその熱気はいつもよりもお客さまに伝わるものです。
まあ、そのおかげで、特にここ数年「修羅場」と言える状況を幾度も切り抜けました。(簡単に言うと「再来週までに14曲あります。」とか…)
ただ、そこで大事になるのはアレンジの「アイディア」と「クオリティ」だと思うのですが、夜中にアレンジしていると、「凝りすぎちゃう」ところがあって…(ほら、昔夜中に書いた手紙を朝読むと「あらー、恥ずかしいー。」という事があったじゃないですか。)
しかも、今はアレンジしたら朝を待たずにメールに添付して納品してしまうので、リハーサル初日に「やりすぎたー」ってなっちゃう訳です。
その度にマエストロ、オケの皆さんに協力してもらいながら、東室のサウンドを作っています。
そんな風にオケのメンバーも三澤アレンジを「はいはい。」と受け入れてくださってるのかなぁ…などと思っています。
私の教育用プログラム「誰でもわかるオーケストラ大辞典」ではオーボエのソロで例の「白鳥の湖」の「情景」の部分が「きらきら星」に変わって行く、という部分があるんですが、
当団のオーボエ奏者の林さんが「この前本物の「白鳥の湖」やった時、間違えそうになっちゃいましたよー。笑」とおっしゃっていました。
三澤としてはチャイコフスキーに勝ったような気分でした。
話がだいぶ長くなりましたが、ぜひ東室のコンサートには、他所では絶対に、ぜーーーったいに聞けないオリジナルアレンジを聴き来て頂きたいな、と思います。
3月29日の「東京室内管弦楽団創立90周年コンサート」の昼公演は「不滅の映画音楽&タンゴ」と題して当団プリンシパル・コンダクター橘直貴氏のタクトによる、まさに岩窪・三澤×東室サウンドをお届けします。
特に岩窪アレンジの譜面でタンゴの演奏をする時は、舞台上で譜面が「ビリッ!」てなって慌てている楽員が見られるかもしれません。
また、私の「三つの子守唄(ベルスーズ)」も再演します。
オフステージバンダのトランペットを伴うフルート、ハープ、弦楽の作品です。
こちらも聴いたことのない方は(ある方も)是非聴いて頂きたいな、と思います。
90周年を迎えた東室。
「岩窪サウンド」を継承しつつ、100周年、さらにその先に向けて、
今後も新しいサウンドを皆さまにお届けしたいと思っています。
三澤さんありがとうございました!
譜面についての考えや、岩窪ささを先生のアレンジの分析など、
アレンジャー独自の視点から語っていただき、新しい知見を得ることができました。
マネージャーからはこれからもどんどん依頼があると思いますので、
引き続きどうぞよろしくお願いいたします…!!
90週年コンサートでは三澤さんの「誰でもわかるオーケストラ大辞典」「三つの子守唄(ベルスーズ)」皆さまぜひ聴きにいらしてください。
皆さまのご来場をお待ちしております。
来週も引き続き「東室90周年コンサートに向けて」をテーマにメンバーからお話を聞いていきます。
担当は東室のコンサートには欠かせないあの方!どうぞ更新をお楽しみに!
※写真は猫の手.jpg(修羅場で借りたいということでしょうか…)と
古文書.jpg(中心部分がビリッ!うわっとなりそう…)です。